雨漏り調査

雨漏り調査の基礎知識

雨漏り調査にあたって最も大切なこと

雨漏り調査はたいへん難しいものです。館長もこれまでとても苦労してきました。何百件という雨漏りトラブルに対峙してきて、雨漏りに関してはそれなりに自信がついた今でも、やはり雨漏り調査は難しいというのが本音です。

もちろん物件によっては、一目見ただけで簡単に雨漏り原因を特定できるケースもあります。雨漏り事例全体からみた割合としては比較的簡単なケースのほうが多いのではないでしょうか。原因特定が難しいケースのほうが圧倒的に少ないと思います。

しかし、その少数の難しいケースがやっかいなのです。何度となく調査を繰り返しても その雨漏り原因を特定できない場合や、雨漏り調査によって雨漏り原因を特定し、その原因となる部位を補修したにもかかわらず、雨漏りが再発してしまったり (つまり雨漏り原因が複数あったわけですが)、とにかく、難しい物件はとことん難しいというのが雨漏りの特徴です。

では、雨漏り調査にあたって最も大切なことはなんでしょうか。

それは「一切の先入観を捨て去ること」です。

そうです。知識や経験ではありません。むしろ知識や経験とは全く対極のことなのです。もちろん知識や経験が全く不要という訳ではありません。最低限の知識や経験が無い人間に、雨漏りトラブルを解決することは到底出来ないでしょう。

ここで重要なのは「知識や経験があるからこそ、その知識や経験が柔軟な思考の邪魔をしてしまう」ことを避けなければならないということです。誤解を恐れずに言い切ってしまえば、雨漏りの解決にとって最も障害になるのが「知識や経験を持つがゆえの先入観」なのです。

ある1級建築士は、RC5階建てのマンションにおいて、3階住居の床に染み出した 「雨漏り」を調査した際、屋上の砂付ルーフィングの劣化が原因であるという結論を出しました。どうやら彼の知識と経験からは「雨漏りイコール屋上」という 答えしか導き出せなかったようです。おそらく彼の知識と経験の中には「雨漏りは屋上からするもの」という情報だけが非常に強い印象で記憶されていたので しょう。

結果から先に言ってしまうと、その「雨漏り」は、なんと「雨漏り」ですらなかったのです。その現象の原因は「結露」だったのです。

「一切の先入観を捨て去る」というのは、その「雨漏り」が本当に「雨漏り」なのか? という最も初歩的なことから疑う必要があることをも示唆しています。単に柔軟性が大切だというレベルではなく、あらゆる可能性を排除しない、という姿勢が 必要だということです。雨漏り調査にのぞむときは、その建物を前にしたとき、まず一度、頭の中を全くのゼロの状態に戻してから取り組みましょう。その「雨漏り」が本当に「雨漏り」なのか?から確認しましょう。それこそが雨漏り解決への第一歩なのです。